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『あの素晴らしき七年』

息子の誕生から父の死までを描くエッセイ

 New York Times, Tablet など各種の英語メディアに発表されたエッセイを集めたもの。ケレットはヘブライ語で書くが、この本だけは英訳が決定版でヘブライ語版は出版されていない。それぞれのエッセイは異なった媒体に発表されたものなのに、こうしてまとめてみると、息子の誕生から父の死までの「素晴らしき七年」に書かれたエッセイ群が、ときにあまり関係ないエピソードもはさみつつ、「親子」というテーマを緩やかに紡ぎあげている。

 フィクションではなく事実に基づくエッセイながら、あっと驚くようなことが起こってしまうのは相変わらずで、そのあたりの「ホント」がどこにあるのかは、映画『エトガル・ケレット ホントの話』を見てもらえばさらに興味がわくだろう。

 イスラエルという世界でも最も難しい場所に生きるケレット一家の日常と非日常、笑えない状況や笑うしかない現実が、ケレット独特のユーモアをもって描かれる。一編一編が短く、すぐ読めるけれども、なんども味わいたい本でもある。

 短く、笑えて、読者を選ばない、なりは小さくても中身はでっかい、そして読み終わったあとにずっと腹に残る。長大で難解でなくても、これだけ軽やかであっても、深遠であることは可能なのだ。

 奥さんのシーラは「ジャッカルみたいな笑顔」を浮かべたり、戯画化して冷たい奥さん風に描かれているし、息子のレブも大人を言いくるめてチョコレートを食べるちょっと悪い子だったりするが、今回の来日ではそのシーラとレブくんも一緒にくるので、実際はどうなのか確かめてみたい。

 2016年に日本語訳を出版した際、エトガル・ケレットは日本に来たがっていたし、訳者である私もぜひ呼びたいと思っていたが、いかんせんお金がなかった。残念ながら今回は日本に呼べない、ということを伝えたら、ケレットさん、こんなビデオを送ってきてくれた。頼んでもいないのに、だ。アイデアあふれるこのビデオを見て欲しい。作家がここまでしてくれたら、そりゃ、周りの人たちはほだされます。

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