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『エトガル・ケレット ホントの話』

ケレットさん主演のハイブリッド・ドキュメンタリー

· 映画

 オランダのステファン・カース監督による、エトガル・ケレットとその作品をめぐる、エトガル・ケレット主演のハイブリッド・ドキュメンタリー映画。実写とアニメーションという手法もハイブリッドなら、ケレットさんをめぐる物語と彼が紡ぐ物語の往復もハイブリッド。

 作家であるエトガル・ケレットの真実を、彼を取り巻く家族や友人、作家仲間の証言をもとに構成していきながら、同時に「ホントの話」って何?「ホント」ってことの意味は?と観る者に考えさせながら、最後は上手にfactをfictionで(あるいはfictionをfactで)くるんでみせる。このエンディングは見事のひとこと。オシャレでさえある。原題はEtgar Keret: based on a True Story で、副題部分は「このお話はフィクションではなく、事実に基づいています」という意味だが、この映画はフィクションと事実の境界を観る者に忘れさせ、両者をメビウスの輪で地続きにしてしまったような世界を創出してみせる。

 ケレット作品への愛に満ち溢れているばかりでなく、独立した映画としても十二分に魅力的。2018年にイタリア賞を受賞した時の評、「審査員は誰もこの作家のことを知らなかったが、皆この映画に魅了された」が、この作品の力を雄弁に語っている。読者じゃなくても、ケレットさんを知らなくても、この映画を見たら絶対このおじさんのことが好きになる。そしてこの映画が好きになる。

 アメリカ文学好きにとっては、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』のジョナサン・サフラン・フォアや『スーパー・サッド・トゥルー・ラブ・ストーリー』のゲイリー・シュタインガートが登場してコメントを寄せるところも必見だし、ケレットファンにとっては友人のウズィや「兵器博物館」を自宅に作っていたというコービの本物が見れるのも楽しい。ウズィ、ケレット、監督らが順番にコービに立ち向かう場面は、いい歳した大人が何やってんだか(笑)、な感じが微笑ましい。

 2018年国際エミー賞の芸術部門受賞。すごい!でも、やっぱりそれくらいのよくできた映画だよなあ、と納得でもある。

 日本では2018年に甲南大学でのイベント「今、この世界で、物語を語ることの意味」においてのみ上映されており、今のところ日本で観れたのはあの日集まった幸運な百数十名のみである。今回の映画祭で劇場初上映となるが、本作は2019年10月開催の山形国際ドキュメンタリー映画祭にも応募中で、その結果いかんでは劇場で見られるチャンスが限定されてしまう可能性も!

 映画を見たら、劇中で度々流れる「でぶっちょ(fatso)」という曲が頭から離れなくなる。お尻がうずうずするこの曲はLittle Black Liesによるもの。試聴はこちらでどうぞ。

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